こんにちはnokです。4月8日に韓国・ソウルで行われたSK Planetプロリーグ11-12 Season1・決勝戦を取材してまいりました!!!09-10シーズンより計4度目の頂上対決となるSK Telecom T1 vs KT Rolster、まさに因縁のライバル対決とも言えます。写真と共に決勝戦の様子をお伝えしていきます。
会場周辺
今回決勝戦が行われたのは、ソウル中心部より地下鉄で約30分ほどにある蚕室(チャムシル)学生体育館(座席数約13,000席)です。周りにはオリンピック競技場、野球場などが併設されており、総合運動場の一部として位置しています。
▲蚕室(チャムシル)学生体育館。当日に写真を撮り忘れてしまったので、これは次の日に撮った写真です。当日はもっと賑やかでした…。
▲KT Rolsterのイベントブースです。ポップコーンとコーラを配っています。
▲KT Rolsterのマスコット、Kibot君も大活躍でした。(ちなみに3体いました)
▲入場を待つ人達。
試合開始前
今回のプロリーグ決勝戦はSpecial Forceとの合同開催でした。Special Forceでは強豪のSK Telecom T1を破り、CJ Entusが初優勝を果たしました。終了後は息をつくまもなく、Starcraftの決勝戦の準備へと取り掛かります。
▲キムテギョン[Bisu]選手が早速準備中です。
▲試合開始前には、両チームによる応援練習が行われていました。
▲名物といえる決勝開始コールを披露するチョンヨンジュンキャスター。会場の熱気をさらに盛り上げます。
選手入場
▲両チームのキャプテン、KT Rolster・パクジョンソク[Reach]選手とSK Telecom T1・イスンソク[s2]選手。
▲3シーズン連続優勝を目指すKT Rolster、そしてリベンジを狙うSK Telecom T1が遂に決勝戦の舞台に上がります。
Set 1 < Neo Chain Reaction > – VOD
キムテギョン[Bisu](P) vs チュソンウク[P7GAB](P)
ついに決勝戦の火蓋が切って落とされます。SK Telecom T1からはキムテギョン[Bisu]選手、KT Rolsterからはチュソンウク[P7GAB]選手がエントリーします。< Neo Chain Reaction >はザーグミラー、プロトスミラーが多く行われているマップです。
キムテギョン[Bisu]選手はゲートウェイを1つ、続いてCybernetics Coreを建てると、対するチュソンウク[P7GAB]選手はメイン裏に隠しゲートウェイを置き、ダブルネクサスのオーダーを取ります。キムテギョン[Bisu]選手はマナーパイロンとジーロットでハラスを入れつつ、早めのテンプラーテクツリーへと進みます。チュソンウク[P7GAB]選手は安全にキャノンを建て、メイン入り口からのダークテンプラーの進入は防いだものの、裏から侵入してきたダークテンプラーにAdunを破壊されてしまいます。その後、キムテギョン[Bisu]選手が見事なハイテンプラードロップで多数のプローブを仕留めると、豊富な兵力でチュソンウク[P7GAB]選手のメインへと攻め込みます。資源の差を大きく付けられ、チュソンウク[P7GAB]選手がGGしました。キムテギョン[Bisu]選手が確実な1勝を上げ、SK Telecom T1が幸先のいいスタートを切ります。
▲E-sportsファン、そしてキムテギョン[Bisu]選手のファンとして有名な韓国人ミュージシャン・パクワンギュが最前列で観戦していました。
▲おなじみのSK Telecom T1マスコット・ティンキー、バンキーも応援します。
▲試合終了後、ほっと一息つくキムテギョン[Bisu]選手。大事な決勝の初戦を勝利で飾ります。
Set 2 < Ground Zero > – VOD
チョンミョンフン[Fantasy](T) vs イヨンホ[Flash](T)
第2セット、テランの勝率が60%を超える”テランマップ”< Ground Zero >で、両チームのエーステランがエントリーします。SK Telecom T1からはチョンミョンフン[Fantasy]選手、そしてKT Rolsterからはもちろんイヨンホ[Flash]選手の登場です。
まずチョンミョンフン[Fantasy]選手が入り口封鎖後、マルチのミネラル裏にファクトリー、そしてスターポートまで建てテクツリーを進める一方で、イヨンホ[Flash]選手はバラックの後にコマンドセンター、次にファクトリー2つにアドオンを追加します。チョンミョンフン[Fantasy]選手が自身のトレードマークとも言えるヴァルチャーをドロップし、イヨンホ[Flash]選手のミネラル採取を遅らせました。その後イヨンホ[Flash]選手がタンク、ヴァルキリー、レイスで圧迫へ向かうも、チョンミョンフン[Fantasy]選手がレイスでそれを迎撃し、空中戦でも優位に立ちます。執拗な攻撃を受けつつ不利な状況に追い込まれたイヨンホ[Flash]選手ですが、このままでは終わりません。チョンミョンフン[Fantasy]選手のメインへ大量のタンクをドロップし、ファクトリー、サプライデポなどをほぼ全て破壊します。お互い激しい攻防を繰り広げる状況で、最後の勝負を決めたのはチョンミョンフン[Fantasy]選手のレイスでした。ゴライアスを次々と落とされてしまったイヨンホ[Flash]選手は相手のレイスを攻撃する手段がなくなりGGを宣言します。TvTとは思えない程のスピード感とお互い一歩も譲らない緊張感のある試合でした。必見の一戦です。
▲試合を見守るSK Telecom T1・コーチ、監督。
▲上・チョンミョンフン[Fantasy]選手、下・イヨンホ[Flash]選手。接戦を制したのはチョンミョンフン[Fantasy]選手でした。
Set 3 < Jade > – VOD
オユンス[soO](Z) vs キムソンデ[Action](Z)
2連勝で優位に立つSK Telecom T1からはオユンス[soO]選手、そしてKT Rolsterからはキムソンデ[Action]選手がエントリーし、ZvZミラーとなりました。この< Jade >ではZミラーが行われた事がなく、またザーグのエントリー数が16回と非常に少ないマップです(プロトス・テランのエントリー数は約50回)。このマップでザーグをエントリーさせてくるあたり、両チームとも戦略的な意図が見え隠れします。
両選手とも同じオーダーでスタートした後、オユンス[soO]選手がLair、Spireとキムソンデ[Action]選手より早い段階で完成させます。そしてスカージでキムソンデ[Action]選手のミュータリスク2体を処理し大きなアドバンテージを取ります。オユンス[soO]選手がミュータリスクとザーグリングでメインへ攻め込むと同時に、キムソンデ[Action]選手も攻撃を仕掛けます。キムソンデ[Action]選手はメインを失ったもののマルチを死守し、一方のオユンス[soO]選手はマルチも無い状況でメインを破壊されてしまいます。ドローンも失ってしまったオユンス[soO]選手は残ったミュータリスクで最後の攻撃に出るもキムソンデ[Action]選手はSporeを建て完璧に防御に成功し、大逆転の1勝を勝ち取りました。
▲大勢の観客も一緒になって試合を見守ります。
▲キムソンデ[Action]選手の大逆転に、KT Rolster・イジフン監督もガッツポーズです。
▲”Forever 英雄、Remember パクジョンソク[Reach]”の垂れ幕を持つキムソンデ[Action]選手。今シーズン限りで引退を表明しているパクジョンソク[Reach]セレモニー?
Set 4 < Sniper Ridge > – VOD
チェホソン[Mong](T) vs イムジョンヒョン[Crazy-Hydra](Z)
続く第4セット、SK Telecom T1はやや意外ともいえるチェホソン[Mong]選手が、KT Rolsterはイムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手がエントリーします。< Sniper Ridge >のマップ成績を見てみるとTvZ=7:5と、ややテランの勝ちが先行しているマップです。
まずチェホソン[Mong]選手がバラックなしのダブルコマンドと果敢な攻めのオーダーを取ります。相手がLairアップグレードをしているのを確認すると、バラックを5つにまで増やします。対するイムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手は3ハッチェリーからミュータリスクを準備します。チェホソン[Mong]選手の5時への攻撃を何とか防いだイムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手でしたが、同時の本陣へのマリーンドロップの攻撃に資源採取を大きく遅らされます。優位に立つチェホソン[Mong]選手はバイオニックからメカニックへ戦力をシフトさせ圧迫を強めるものの、決定的な一撃を繰り出せません。不利な状況の中、イムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手はミュータリスクの数を揃え、空中からの攻撃によって徐々にリードを取り返していきます。チェホソン[Mong]選手のタンクラインへのダークスワーム+ザーグリングの攻撃でユニットを一掃し、勝利を確実なものとしました。チェホソン[Mong]選手が状況を覆すだけの兵力もなくGGを宣言し、前セットに引き続きKT Rolsterのザーグライン・イムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手が大逆転を収めました。
▲SK Telecom T1の応援団。可愛い女の子ばかりでした。
▲スコアを2-2に戻したイムジョンヒョン[Crazy-Hydra]選手。今シーズンのKT Rolsterのザーグラインは非常に強力です。
Set 5 < Neo Outlier > – VOD
チョンユンジョン[By.Sun](P) vs キムデヨプ[Stats](P)
2-2のスコアで迎えた第5セット、ミラーマッチの比率が6割を超えている< Neo Outlier >にSK Telecom T1からはチョンユンジョン[By.Sun]選手、KT Rolsterからは”新型兵器”キムデヨプ[Stats]選手がエントリーし、PvPミラー戦となりました。
キムデヨプ[Stats]選手が早い段階でテンプラーを出すテクツリーを進めながらマルチを確保する一方、チョンユンジョン[By.Sun]選手はゲートウェイを3つにまで増やしロボティクスを建て、両者のオーダーが完全に分かれました。3ゲートウェイからの兵力で相手のマルチに攻撃を仕掛けるチョンユンジョン[By.Sun]選手でしたが、キムデヨプ[Stats]選手は2体のダークテンプラーでその攻撃を何とか凌ぎます。しかしチョンユンジョン[By.Sun]選手が攻撃の手を緩めることはありませんでした。裏側の通路からキムデヨプ選手の本陣へ多数のドラグーンを送り、多数のプローブを破壊します。次には息をつくまもない正面からの攻撃でキムデヨプ[Stats]選手はマルチも失ってしまいます。一矢を報いる為に攻撃へと向かったキムデヨプ[Stats]選手でしたが、シャトル付のリーバーが2体も揃っている状況を覆すことは出来ずGGを宣言するほかありませんでした。チョンユンジョン[By.Sun]選手の勝利で、SK Telecom T1が3-2のスコアで優勝に王手をかけます。
▲Set 5開始前には、両チームの応援団+マスコットによるダンスがステージで披露されました。
▲3ゲートウェイで積極的に攻めのオーダーを取るチョンユンジョン[By.Sun]選手でした。
▲優勝に王手をかけたSK Telcom T1。全員がチョンユンジョン[By.Sun]選手を笑顔で迎えます。
Set 6 < Neo Electric Circuit > – VOD
ドジェウク[Best](P) vs コガンミン[HoeJJa](Z)
優勝まであと1勝というところで、SK Telecom T1からはvsZ戦6勝1敗のドジェウク[Best]選手が、KT Rolsterからはポストシーズンで7連勝中と絶好調のコガンミン[HoeJJa]選手がエントリーします。どちらの選手も好調なだけに、試合の行方は予想がつきません。また< Neo Electric Circuit >のマップ成績はPvZ=2:2と両種族共に同じとなっています。
ドジェウク[Best]選手はダブルネクサスから始まりテクツリーを進めていく一方、コガンミン[HoeJJa]選手はハッチェリーを増やしHydralisk den、Spireを同時に建てます。ドジェウク[Best]選手がダークテンプラードロップでメインへのハラスへ向かうも、コガンミン[HoeJJa]選手は既にオーバーロードの移動速度UPを終えており、大きなダメージを与えられません。Hiveが早かったコガンミン[HoeJJa]選手はデファイラーのプレイグを活用し、ドジェウク[Best]選手のマルチを圧迫します。ついにはクイーン、そしてウルトラリスクまでを総動員で攻撃に向かい、ドジェウク[Best]選手のGGを引き出します。これでポストシーズン8連勝となったコガンミン[HoeJJa]選手、立派に役割を果たし優勝の行方は第7セットのエース決定戦へと持ち越されました。
▲チームの窮地を救ったコガンミン[HoeJJa]選手。ポストシーズン8連勝と勢いが止まりません。
▲パクテミン[GoRush]解説員(左)と、カンミン[Nal_rA]解説員(右)も会場に来ていました。
Set 7 < Neo Chain Reaction > – VOD
キムテギョン[Bisu](P) vs イヨンホ[Flash](T)
泣いても笑ってもこれが最後の一戦、エース決定戦にまでやってきました。この大舞台に両チームのエースがエントリーします。SK Telecom T1がキムテギョン[Bisu]選手を送り出すと、KT Rolsterからはやはり”最終兵器”イヨンホ[Flash]選手が登場します。優勝をかけた両チームのエース対決、まさに決勝戦といえる展開に会場の熱気も最高潮に達します。Set 1と同じくマップは< Neo Chain Reaction >ですが、このマップで行われた全23試合中でテランのエントリーがたった2回のみ、その上2戦全敗というかなりテランにとっては厳しいマップです。さらにイヨンホ[Flash]選手はこのマップでのエントリー経験が無いという状況で、より一層負担を感じていたかと思われます。
この大舞台でキムテギョン[Bisu]選手が先手を取ります。マップセンターにゲートウェイ、そしてガスハラス、マナーパイロンを決め積極的に攻めの姿勢を見せます。イヨンホ[Flash]選手は最初のジーロットラッシュを見事なマリーンマイクロで返すものの、キムテギョン[Bisu]選手はその後も途切れることなくジーロット、ドラグーンを送りゲームの主導権を握ります。防戦一方だったイヨンホ[Flash]選手もユニットを揃え徐々に攻撃に転じます。相手のメイン裏の丘上にマリーン、タンクを送りCybernetics coreの破壊に成功しました。しかしここでのキムテギョン[Bisu]選手の一瞬の判断が試合を決定付けます。速度UPしたジーロットをイヨンホ[Flash]選手のメインへ進軍させ、大量のSCV、タンクを仕留めます。この攻撃でイヨンホ選手はほぼ全てのユニットを失い、GGを宣言しました。キムテギョン[Bisu]選手、イヨンホ[Flash]選手共に別次元ともいえるマルチタスキングから生み出される激しい攻防に、解説陣、観客共に試合に釘付けでした。こちらも必見の一戦です。
▲”テランがエントリーしてはいけないマップ”とも言われる< Neo Chain Reaction >で戦うイヨンホ[Flash]選手。もう負けられません。
▲キムテギョン[Bisu]選手、チームの優勝の為に最後の戦いに向かいます。
優勝、SK Telecom T1!
エース決定戦にまでもつれ込む接戦の末、SK Telecom T1が4-3で3年ぶりとなる優勝を果たしました。KT Rolsterも奮闘したものの、ザーグラインの大活躍とは裏腹に頼みのイヨンホ[Flash]選手、キムデヨプ[Stats]選手が期待に応えられませんでした。授賞式の後にはSK Telecom T1への優勝者インタビューが実施され、全てが終了した頃には既に日付も変わっていました。
▲イヨンホ[Flash]選手のGG後、ブースを飛び出し床に倒れこむキムテギョン[Bisu]選手。本当に嬉しそうでした。
▲パクワンギュも飛び上がって喜んでいました。そしてキムテギョン[Bisu]選手と熱い?ハグを交わします。
▲チームメイトにも抱きつき、興奮冷めやらぬといった感じです。
▲惜しくも優勝を逃してしまったKT Rolster。重い空気が漂います。
▲終始顔を上げることが無かったイヨンホ[Flash]選手。無念さが伝わってきます。
▲準優勝のKT Rolster。パクジョンソク[Reach]選手の最後の大舞台が終わりました。
▲見事リベンジを果たしたSK Telecom T1。優勝カップを掲げます。
▲勝利の帽子投げ?で決勝戦を締めくくります。
取材後記
3月のプロリーグ現地取材に引き続き、4月も再度現地にまで足を運んで来ました。レポートはいかがでしたでしょうか。個人リーグ決勝戦の取材経験はありましたが、プロリーグ決勝戦の本格的な取材は初めてだったのでとても新鮮でした。
今回改めて思ったのは、試合の面白さ以外にもちゃんと観客を盛り上げる演出があるという事です。両チームのマスコット達によるダンスの披露や応援合戦など、観客も一緒になって楽しめるエンターテイメントもちゃんと準備されています。この辺りは長年培ってきたノウハウの賜物なのではないでしょうか。観客もまた決勝戦の重要な要素の一部なのだと、今更ながら実感しました。また個人リーグとは一味違った緊張感もありました。自分の勝敗がチームの勝敗を左右するので、選手達一人ひとりが大きな責任感を持って試合に臨んでいました。勝った時の嬉しそうな表情、負けた時の悔しそうな表情が、陳腐な言葉になりますがとてもドラマティックで、見ていてこみ上げてくるものがありました。
諸事情で行く前は全く乗り気ではなかったのですが、いざ決勝戦が始まってみると…結局は信じられないぐらいに楽しかったです。自分のお気に入りチームじゃないしゆっくり見ようーなんて思っていたのはどこへやら。ファンの声援、解説陣の熱い実況、選手達の真剣な眼差し、両チームの応援合戦、何よりも決勝戦に相応しい両チーム一歩も譲らない戦い、もうどこをどう見ても楽しくて仕方ありませんでした。気付けば試合のひとつひとつの動きに声を上げながら見ていました。
「ゲーム」と言ってしまえばそれまでなのですが、こんなにも色んな方面から全力で楽しめるゲームに出会えて私はとても幸せです。そして素晴らしい経験の場を与えてくれたStarcraft Timesにも感謝しています。SC1を好きになって本当によかったです。あとはソンビョング[Stork]の個人リーグ優勝のみを切実に願っています。みなさん長々とお付き合いありがとうございました。 – nok
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