1月19日(土)20日(日)の二日間、東京・渋谷に位置する原宿クエストホールにて『第4回eスポーツJAPAN CUP』が開催され、SC2部門でGAMES okinawaの西村直紘[PSiArc]選手が優勝を果たしました。
以下は、shuiniao(スイニャン)が行ったPSiArc選手のインタビューです。
-JAPAN CUP SC2部門初の2回優勝を果たした感想は。
最近はプロ水準と比べて自分のプレイヤースキルや本番に対処する能力などに疑問を持っていて引退するべきかと悩んだりすることも多かったので、結果が出せたのは純粋に嬉しかったです。最後のゲームで負けたかなと思う瞬間もあったので、試合が終わった瞬間の興奮や解放感が半端無かったですね。あと、トータルスコアでは勝ってるのに試合の重要度づけで負けたらどうしようとも思いました(笑)。でも2回目の優勝というのは特に意識しなかったですね。他の種目ですでに連覇している選手がいるというのもあったかもしれないし、単純に勝たなければならないというのではなくいつもの自分のプレイを出せばそれでいいという意識があったからかもしれません。
-今大会に向けて準備はどのように行いましたか。
本当に今回はほとんどラダーしか回していない感じでしたが、色々とテーマを決めて練習したりはしてましたね。マルチドロップで有利を取って決めきるゲームをまとめて練習して、次にドロップにあまり頼らずにタイミングプッシュで決めるゲームをまとめて練習してとか、あえて中盤まで無難なだけのプレイをして後半を集中的に練習するとか、疲れてきたら今度はチーズだけで戦ってみるとか色々やってました。参考にしたプロプレイヤーだと、やっぱりBomber選手が一番に来ますかね。ほかにもWestern WolvesのSting選手、Taeja選手やMvp選手など一線級のテランはひと通り研究しました。
-当日のコンディションはいかがでしたか。
今回は前回と違って集合時間が遅く、前日入りではなかったので朝7時に家を出たんですが、最初の試合は多分予定が少し押していて16時を過ぎてたんですよね。それで眠くならないか不安ではあったんですけど、その日の2試合が終わるまでは十分覚醒した状態で持ちこたえた感じでした。ESWCフランス大会から帰ってきた後に時差ボケで生活リズムが乱れてしまい、なんとか朝型に戻したもののちょっと不安要素だったんですけど、その点はなんとかなりましたね。次の日は1日目よりも早く、眠気的な意味では大丈夫でした。ただ、競技者に向いていないんじゃないかと思うくらいストレスが体に出るというか、大会前1週間くらいから寝不足気味で悪夢を見て起きるといったことは繰り返していましたね。実は土曜の朝もお腹を壊していたので、ポケットのある腹巻をまいてホッカイロをそこにいれてずっとお腹を暖めていました(笑)。
-大会でのゲーム環境はいかがでしたか。
ステージ外の競技席が以前と比べて妙に机が高くなっていたので、人によってけっこうやりづらそうにしてましたね。椅子も低かったのか、椅子と机の高さの差が相対的に大きかったです。それと照明を消してあって暗いので、デバイスを接続するのに手間取ったりする場面もありました。セッティングも本当にばたばたしていて、最初に自分の席だと言われた所が実は別の席だったんです。それで慌てて準備を始めたんですけど、時間になってしまったので中断しました。すると選手入場とゲーム説明が終わったらすぐに試合開始なのにセッティングが出来てないということになるので、そこからはばたばたですね。特にJAPAN CUPの場合は防音のためにゲーム音を流すイヤホンと音楽を流すヘッドセットのセッティングもあって、ヘッドセットを認識させるのにSC2を再起動する必要が出たりもして、それもセッティング時間に含まれるので長めに欲しいです。トラブルなんかを考えると20分くらいは欲しいところですかね。
-今回、防音問題も取り沙汰されていたようですが。
そうですね。ステージ外の競技席ではヘッドセットだけでいいと言われたんですが、それではやはり不足していてステージから大音量のアイドルの歌や裏配信の声も聞こえることがあって、防音を訴えてからはみんなイヤホンとヘッドセットをするようにして解決しました。ただ今回は前回の反省を踏まえて審判が音量を設定することになっていて、音楽プレイヤーの音量がちょうど0-100で設定できるうちの50に設定してあったんですが、ステージ上で試してみるとMCの話も聞こえてしまう感じだったので、申告して100に上げてもらいましたね。あと音楽ファイルが編集しきれておらず、曲をループする切れ目に4秒ほど無音の時間が発生するようになっていたんですよね。自分の場合はその間に致命的な情報が聞こえるということはなかったんですけど、穴には違いないので改善の余地があると思います。
-では、予選で印象に残っている選手がいれば教えてください。
印象という面では明らかに前より強くなってるvaisravana選手は印象に残りました。2戦目なんかはうっかりSiegeTankを広く配置しすぎてたらBanelingBustで突破されて負けるかもというぐらいになったので、けっこう危うかったですね。前はDroneを伸ばすのを恐れてる感じがあって物量が十分に出てなかったんですけど、最近のvaisravana選手は中盤以降にちゃんとDroneを揃えて物量を出せるようになっているので、しっかりプレッシャーをかけたり自陣に隙を作らないようにしてプレイしないと怖いザーグになってますね。
-決勝戦はいかがでしたか。オーダーは事前に準備していたものだったのですか。
オーダーは事前に準備していたものではないです。いける感じがしたからいったというか、攻めたゲームは基本的に展開を見て決めた感じですね。kurOa選手のフェイクプレッシャーが本当のプッシュだったらまずいので、安全に安全にという選択をとってSCVを常に動員しているような形が多かったので、安全を買うために中盤に不利になるゲームが多かったと思います。あとは意外なTechの伸ばし方をして有利を取られたゲームなんかもありましたが、まあ予選も含めて基本的にお互いにミスがけっこう多かったなという印象があって、kurOa選手が攻め間違ったところを自分がカウンターで取ったゲームが多かったですね。
-第3セットは見事な逆転勝利でしたが、勝因は。
粘り勝ちですかね。オーダー遅れてたりミスをして不利になったりしつつも生産施設をちゃんと追加していたので最低限対抗できる軍隊がいる状況で、kurOa選手が攻め急ぎすぎてstormを焦って打ったのを2~3回避けることができたので、そこで逆転したのがすべてだと思います。逆に言うと、そのミスがなければkurOa選手が勝っていた可能性が高いですね。
-日本の2トップとしてkurOa選手とのライバル構図ができているようですが。
うーん。どちらかというと皆さんにそういうのを意識しないでいてもらって、気楽にやりたいですね。評判的なものって実際にやってる側とずれちゃうこともあるのであまり気にしたくないというか…。評価されないし人気もないけど地味にベストいくつに入り続けている感じの「いぶし銀」的なポジションにつきたいんですよ、僕は(笑)。まあ今は2トップかもしれませんが、すぐに簡単にずれていっちゃいますし、いつ入れ替わってもおかしくない程度の差だと考えていただければいいと思います。
-では、今後のStarCraft2の活動予定と目標を教えてください。
とりあえず今は告知されてる大会がないので当面は弱った指を休めて、あとは頑張ってラダーでいう300ポイント相当くらい強くなって海外大会で成績を残せるようになるか、力及ばず引退するかですかね。 目標は、ENZAプロです!あの人は本当にピュアな少年のようになんでも受け入れるからゲームを理解して成長し続けている感じで、目標としているプレイヤーです。長年WC3でもCS1.6でもプロやってきてるだけあって、上達するために気をつけるべきポイントを骨の髄から理解しているところが百戦錬磨の老兵かといった感じで、才能の差すら感じるレベルでやばいですね。まあ才能じゃなくて経験だと思うんですけど、どんな負け方しても怒らないで「へぇ、こういうゲームなんだー」って感じでやり続けてて、この人の真似してたら強くなれるんだろうなあって思ってます。配信掲示板に出没するだけのネタ勢みたいになってるけど(笑)、あの人は半端ないです。
-応援してくれたファンへメッセージと、他に何か言いたいことがあればどうぞ。
ESWCから帰ってきてから風邪引いて寝込んでたついでにそのままTwitterとかIRCすらほとんど現れずに黙々と練習してたんですけど、それでも応援し続けてくれた人には本当に感謝してもしきれないです。少なくともすぐには引退しないので、これからも楽しみにしていてください。あとENZAプロに勝つ方法を教えてください!
写真・インタビュアー:shuiniao(スイニャン) @ 水長 浩美 / Hiromi Mizunaga