引退を宣言した選手のインタビューをするときは、だいたい二種類の雰囲気に分かれます。これから何をするのか決まっている選手とのインタビューは、明るい雰囲気で行われます。一方、自分の意志ではなく引退をしなければならなくなった選手たちは、少し暗い雰囲気が醸し出されたりします。
ユンヨンテ[Free]の場合は、後者でした。まだゲームを続けたいという情熱があり、前シーズンに良い成績を収めたユンヨンテ[Free]だっただけに、来シーズンに対する意志を固めていたそうです。チームもプロリーグ初の決勝進出を成し遂げたので、一生懸命来シーズンに備えた練習をしていましたが、チームの規模を大幅に減らすという青天の霹靂のような話を聞かされたのです。ウェーバー公示になり、自分を引き抜くチームがないと分かりとても辛かったというユンヨンテ[Free]は、結局引退を決意しました。プロリーグ終了後3か月ぶりに会ったユンヨンテ[Free]は顔がとても疲れた様子でした。気苦労が本当に多かったように見えました。
インタビューを要請したところ悩み続けていたユンヨンテ[Free]が、何かを決心したように「インタビューに応じる」と連絡してきたのは11月初めでした。気持ちの整理をつけたユンヨンテ[Free]はプロゲーマー生活を終わらせ、ファンに言いたいことを最後に伝えるためにインタビューに応じたと伝えました。
コーヒーショップに座り、10年間あったことをじっくり思い起こしたユンヨンテ[Free]。淡々と自分の話を伝えることが最初はとても辛そうに見えましたが、むしろ話をしながら少しずつ心が安定していきました。最後には、幸せなことのほうが多かったと思うとにっこり笑ったユンヨンテ[Free]の話を今から一緒に聞いてみましょう。
「残念な気持ちが大きい理由は…」
今のWoongjinが設立される前Hanbit Stars所属だった頃、ユンヨンテ[Free]のニックネームは「雷帝」以外にももうひとつありました。それは「600万ウォン(約56万円)のエース」でした。彼がチームを養っていた時代、練習生時代にもらっていた月50万ウォン(約4万7千円)をもらい続けていたことが知られ、彼には600万ウォンという言葉がレッテルのようにつきまとっていました。
幸いなことにHanbitがWoongjinに買収され、ユンヨンテ[Free]はこれまで自分がしてきたことに対する補償を受けることができました。億レベルの年俸ではありませんでしたが、以前の年俸600万ウォンだった時代に比べればあまりにも幸せな日々でした。
しかし幸せもつかの間、ユンヨンテ[Free]が所属しているWoongjinは経営難が深刻になり始めました。結局、Woongjinがチームを解散するかもしれないという噂が広まり始めました。ユンヨンテ[Free]の立場ではHanbit時代を経験したので不安でした。
それでもチームはずっとポジティブな話を選手たちに伝え続けていたので、ユンヨンテ[Free]は来シーズンに対する意欲を燃やしており、それは他の選手たちも同じでした。解散はしないようだという話を聞いたユンヨンテ[Free]は、今回が最後だという気持ちですべての情熱を注ごうと誓ったのです。
「STX SouLは、既にシーズン中盤から選手たちにチームが解散すると話してくれていたと言うんですよ。でもWoongjinは違いました。だから引き続き一生懸命努力していたし、プロゲーマーを辞めるということはほとんど考えたことがありませんでした。決勝戦が終わっても、来シーズンには必ず優勝しようと選手たちと意志を固めていたんです」
しかしシーズンオフの間、ユンヨンテ[Free]をはじめキムミョンウン[ZerO]、ノジュンギュ[BrAvO]、イジェホ[Light]など主力選手たちは衝撃的な話を聞かなければなりませんでした。Woongjinがチームを維持する代わりに、選手たちの年俸を大幅に削減したのです。実際に会社が大変なのでどうしようもない状況だということは分かっていましたが、ユンヨンテ[Free]をはじめチームが正規シーズン1位になるために1年間努力した選手たちにとっては受け入れがたい決定でした。
「チームを維持し続けるという希望のある話をされましたが、契約過程で急に年俸削減という話を聞いて途方に暮れました。削減幅がとてつもなかったんです。もはやプロゲーマーを続けられないほどでした。 (イ)ジェホ[Light]はすぐに引退を宣言し、他の選手たちはその年俸では到底再契約をすることができないという意見を伝えました。会社もベストを尽くしたと思いますが、結局僕たちはウェーバー公示になってしまったんです」
どうしようもない状況だったとは言うものの、ユンヨンテ[Free]の立場ではパニック状態に陥るしかありませんでした。Hanbit時代からWoongjinまで10年間プロゲーマー生活をしてきたチームを去らなければならなくなったからです。また、ウェーバー公示になったといっても年齢のせいで他のチームが自分を引き抜かないことをあまりにもよく分かっていたので、ユンヨンテ[Free]はウェーバー公示になった瞬間、「引退だな」と思ったそうです。
「僕は辞めたくて、楽しくなくなって、情熱が冷めて引退をするわけではありません。海外チームに行こうかとも悩みました。プロゲーマーを辞めるということを考えたことがなくて混乱しましたね。でも結局ここまでだという結論を得ました。Woongjinを恨みたくはありません。今のような状況でチームを維持させてくれるだけでも、ありがたいことですからね。でも個人的には残念な気持ちが大きくならざるを得ないのは仕方がないと思います」
もう誰も恨みたくないというユンヨンテ[Free]は、「ここからは楽しい話だけにしましょう」と明るく笑いました。
「何をしても成功する自信があります」
何らかの仕事を根気よく10年間続けることは容易なことではありません。最初の職場で10年以上居続ける人が、果たしてどのぐらいいるでしょうか。そういう意味でユンヨンテ[Free]は、初めに選択したプロゲーマーという職業を10年間続けた自分を誇らしく思っています。
「誇りを持ってもいいと思うんです(笑)。何かを根気よく10年やったということも誇らしいし、その中でそれなりの成果も得ましたよね。誰かに僕の20代を話すときに恥ずかしくないと思うので幸いです。そして、これから何をしても上手くやれるという自信もつきました」
プロゲーマーをしながらユンヨンテ[Free]が得た一番大きなものは自信でした。人々はプロゲーマーという職業を簡単なものだと考えていますが、実はプロゲーマーほど大変な職業もありません。プライベートな時間がほとんどない状況で合宿生活をして、1日に10時間以上の練習をしなければならない過酷な職業です。しかも勝負の世界なので、ストレスは一般の会社に通うよりも倍にならざるを得ません。
「他の人たちのことはよく分かりませんが、おそらくプロのゲーマーをやっていた選手たちは、心の中でそういう気持ちを持っていると思います。自分は何をしても成功できるという考えです。こんなに大変な仕事を10年も続けてきて、今後どんなことでもできないわけがありません。勉強でも事業でも、何をしても成功できるという自信がつきました」
ユンヨンテ[Free]はどのような分野になったとしても、成功した人物として再びファンに挨拶することができるよう今後選択する道にベストを尽くしたいという意志を伝えました。10年後、ユンヨンテ[Free]を覚えているファンに良いニュースが伝わりますようにと、おそらく多くの人々が願っているはずです。
愛する仲間たち、そしてファンの皆さん
本来、そばにいるときはその大切さにあまり気づけません。ユンヨンテ[Free]もその言葉を実感しました。10年間ともに泣いて笑って生活した仲間たちと別れてからこそ、彼らが自分にとってどれだけ大切な存在だったのかを悟ったそうです。
「仲間たちの存在が、僕の生活にどれだけ深く占めていたか分かりました。当然そばにいてくれた仲間たちでしたが、こうして離れてみると正直寂しい思いもしましたよ。彼らがどこにいてもすべてが上手くいけば良いですし、幸せになってほしいと願っています」
ユンヨンテ[Free]は、最後まで自分を応援してくれて愛してくれたファンにも感謝の挨拶を忘れていません。ユンヨンテ[Free]は「お姉さん部隊」を初めて誕生させた張本人でもあります。ファンにどれほど大きな愛を受けていたか分からなかった分別のなかった頃にも自分を守ってくれたファンが懐かしく、会いたいと言っています。
「今も皆さんお元気でしょうか(笑)。会場に毎回来て応援してくれたファンの皆さんが今でも思い出されます。彼ら彼女らがいなかったら、今のユンヨンテ[Free]もなかったでしょう。いつか道端で会ったら、声をかけてもらえると嬉しいです。おそらく生きていく活力として永遠に覚えているでしょう。うわべだけではなく、本当に心から感謝してます」
最初は落ち込んだ様子のユンヨンテ[Free]でしたが、すぐに「他のことは残念ではないがソンビョング[Stork]より早く引退するのはあまりにも残念だ」という冗談を言うほど、気持ちが楽になったのを感じました。誰よりも戦闘が上手かったユンヨンテ[Free]を、我々は忘れずに覚えているでしょうし、ユンヨンテ[Free]もそれが分かったので笑顔で去ることができるという気持ちを伝えました。
「eスポーツを愛していた多くの人々に、ずっと応援し続けてほしいと言いたいです。最近SC2のゲーミングチームが縮小され、ゲーム規制案が発表されるなどいろいろな困難がありますが、それでもファンの応援がある限りeスポーツ界は永遠であると信じています。これからもずっと応援し続けてもらいたいですし、僕が後にここに属している人間だったことを誇りに思えるように守ってください。皆さん、健康で幸せになってもらえたらと思います。僕も幸せになります!」
[デイリーeスポーツ イソラ記者 sora@dailyesports.com]
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