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『GSL回線パンク騒動』から見る韓国 StarCraft II の夜明け

国内外の試合結果報道や業界ニュースのローカライズが多すぎて忙殺されている Starcraft Times 運営メンバーですが、たまには記事らしい記事を書かせていただこうかなと。

皇帝イムヨファン[BoxeR]は回線までパンクさせてしまう

現在進行中の『Sony Ericsson STARCRAFT II OPEN Season2』にて、10月18日の試合でイムヨファン[BoxeR]選手が出場。韓国だけでなく欧米圏においても『プロフェッショナルRTSの父』と言って良い扱いを受けている彼の動向は非常に注目されていました。

boxer

試合が進みイムヨファン[BoxeR]選手が登場すると、TV放送ではなくネット放送のみの大会にも関わらず、韓国語放送の同時接続が77万人を突破。GomTVの回線をパンクに追い込んだだけでなく、SC2関連メディアのサイトや、果ては『Gom』という単語にまつわるサイトまでもが局地的なアクセス激増に見舞われた。さらにはこの騒動の結果、放送から切断された難民視聴者が大量発生し、各所でコメントの嵐を発生させる事態となった。なお、試合後に公開されたVODファイルはものの数分で43万アクセスをたたき出している。

韓国 StarCraft II の夜明け

私はこの騒動を『韓国 StarCraft II の夜明け』だと考えます。私自身韓国に訪問した回数はそれほどではないですが、10年近く『プロフェッショナル StarCraft』の最前線をファンとして追ってきた目から見ると「韓国のスタクラ2人気はそれほどでもない」と感じていました。

各所で「StarCraft II 最大のマーケットは韓国だ」と報じられており、それに間違いはないでしょう。しかし『StarCraft: BroodWar』人気と比べると『StarCraft II』発売当初は、むしろ欧米圏のほうが明らかな熱気を感じました。実際『StarCraft II: Wings of Liberty』発売直後のタイミングで、私は韓国にて『新韓銀行プロリーグ』の決勝戦を観戦してきました。その際に、元eSTRO監督でもある Daniel Lee 氏の経営するネットカフェを訪問しています。残念ながら時間の都合上本人と直接面会することは出来なかったのですが、電話でのやり取りをさせていただきました。彼の語った内容として「うちの店に限らず、ネットカフェでゲームをするほとんどの人は今までと変わらないタイトルをプレイしている。SC2はゲーム目的で来店しているお客の1割程度しかプレイしていないだろう、SC1のほうが圧倒的に多いよ。」というものだった。彼の言葉通り、私の訪れた全3店舗では多くの顧客がSC1をプレイしていた。

日本を含め大手ゲームメディアでは「韓国が一番盛り上がっている!」という宣伝がなされていたが、韓国業界人やスタークラフトを熱心に見守る欧米業界人は「いまのところ韓国は静かだ」という適切な考察をしており、実際その通りだった。
現在の現地の情報は私が日本在住なので定かではないが、ネットでの動向を見る限り「SC2の大会があるらしいよ!」から「GSLの何回戦で○○と○○が対戦するよ!」「こんな戦術が登場したらしいよ!」といったように、『StarCraft II』ではなく『SC2をベースにしたプロゲーミングエンターテイメント』へと話題が移り変わっている様子を伺える。

私も長い間 StarCraft シリーズに触れているために、ゲーム仲間がいる。そこには日本人だけでなくアメリカ人や韓国人ももちろんいる。そういった仲間との会話の中で「スタクラ2はまだまだバランス面でこれからだね、そのスタート地点となるのは間違いなくGSLだろうね」という会話を何度もしてきた。実際にGSLで行われている試合というのは欧米の大会と比べて明らかにレベルが高い。そして今回の騒動から見える事実に「韓国で StarCraft II が e-Sports タイトルとしてスタートをきったのは GSL Season2 だ」といえるだろう。e-Sports という市場においてゲームタイトルそのものの出来の良さは大事だけれども、それはすでに最低条件であるといえる。その先にある『プロがプロたる実力と、一般人を惹きつける魅力を持っている』ということが大きく左右してくるだろう。野球というスポーツの魅力以上にイチローという選手の持つ魅力が注目されるのと同じことだ。

それが揃っている韓国での StarCraft II は、実のところ最初は大した盛り上がりではなかった(コアゲーマーだけが注目していた)。だがそれらが揃ってしまった今、韓国 e-Sports 界における StarCraft II の躍進は圧倒的な速さとなるだろう。

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